第一話・邂逅
午後1時半頃、私は石橋に降り立った。
この日は3時からコンバット老人さん主催の「聖地巡礼」の開催が予定されていた。私はそれに参加するために、中津駅から急行電車に揺られること20分、阪急石橋駅にたどり着いたのだった。
マクドナルドでダブルチーズバーガーセットを食べた後、アゼリアタワーの隣のゲームセンター「ガンマ」に立ち寄る事にした。恐らく関東組はここで時間をつぶすであろうと言う期待があったからである。
変に薄暗い店内は、ねっとりとしつつひんやりとした妙な空気に充満されていた。いわゆる治安の悪いゲームセンターにありがちな質の悪い空気である。
(いる……!)
店の奥に、大きな鞄を抱えた団体がいる。その中の数人が黒いデス2Tシャツを着用しているのを見て、期待は確信に変わった。
「あ、ちょっとすみません」
左肩にほころびのあるデス2Tシャツを着ている人に声をかけてみることにする。
「もしかして、そのTシャツは……?」
「あ、このそばにこのゲームを作った会社があるんで、そこに見学に来たんですよ」
「わざわざ東京から。ははははは」
……間違いない。
「すみません、失礼ですがお名前、ハンドルは?」
「あ、私、上州マンって名前でやってます」
隣の人が話に加わってくる。
「私、コンバット老人と申しまして」
「あ、あなたが! じゃあ、これ、差し上げます」
と、手にしていたデス2ポスターを渡してみる。以前、コンバット老人さん(以下「閣下」)にこのポスターを差し上げる約束をしていたのだ。これで私が誰だか解ってくれるだろうと言う読みもあってのことである。
「え、あ、あなたは……!?」
狙い通り、閣下は私の正体に気付いたようだ。
「もしかして、はんねこさん?」
(注:ワタシの名前は「はんみょう」です)
「いやぁ丁度良かった。なんかいきなり社長から電話があって、2時に来いっていうことらしいんデスよね」
……閣下の「です」は明らかに「デス」とカタカナで発音している。流石だ。
「なんかイベントをやるとかいうことらしくて。何でしょうね、監禁されたらどうしましょう」
真顔でそう言い、閣下はちょっと不安そうな表情を見せる。
「いや、でもまあ、『とにかく行ってみようぜぇ』ってことで」
「じゃあ、早速行きますか」
私たちは「ガンマ」を後にした。
(続く)